第51章 里帰り$
「はい、冨岡さん、とっても速いですし、あの…」
「何だ?」
「重くないですか?」
「大丈夫だと言っている」
「はい」
彼は優しい。
本来ならば訓練もかねて、自分でも走るべきだが…
「そろそろ今日は終わりだ」
そう、柱の足でも1日では着かないくらいの距離なのだ。
今の私ではその倍以上かかるだろう。
「はい、冨岡さん」
以前に振る舞った高菜のおむすびが気に入ったらしいので、今回も高菜と疲労回復にと真ん中に味噌を少量入れてある。
おむすびを手渡すと馳走になると言ってから黙々と食べる冨岡。
そう、彼は口に物が入っていると話せない性分なのだ。
その横で冨岡の物より幾分か小さく握ったおむすびを白藤も口に含む。
彼と居るときはなるだけ食事をしようと思い始めたのがきっかけだ。
まぁ、体力作りの面もあるが。
食べてる時の冨岡さん、可愛い。
この瞬間が幸福と呼ぶのだろうか。