第49章 薄氷$
$$$
村田さんに言われた通り、念入りに湯浴みに入ってみたけれど…
「こんなことで、冨岡さんが許して下さるのかしら…?」
髪を濡らしたまま、部屋で手拭いを使いながら、少しずつ乾かしていく。
「せっかくですし…」
効果があるかは別として、冨岡から貰った桜色の紅を唇にのせてみる。
湯浴み後だからか、いつもより赤らんだ頬、濡れたままの髪…
やっぱり普通に謝ろう。
色仕掛け程度で動じるような人ではないし…
いつもの着物ではなく、浴衣にしたのも村田の助言によるものだ。
彼曰く、いつもとは違う一面を見せてみるのがいいのだそうだ。
下着もつけるなとのお達しである。
実践してはいるものの、冨岡は中庭にでも出ているのか寝室に戻ってくる気配がない。
ふぅとため息を一つ吐いて、寝室の壁に凭れた時だった。
「白藤?」