第49章 薄氷$
数十年前。
「白藤…起きるんだ」
「……御館、様?」
「よく眠っていたね、白藤…」
「今、何刻…ですか?」
「新月の牛の刻だよ?」
まだ、夜明け前…
「眠れないんだ…怖いんだ…眠るといつも…頭の中で声がして…」
「御館様…大丈夫ですよ…」
「何が大丈夫だ。鬼舞辻が見つからない限り、私の呪いは解けない…」
動かない手足、気だるい体。
回らない思考。
グッ。
白藤の首が絞められる。
「っ……ぁ…」
「苦しいかい?…でも、私も苦しいんだ…!いつ死ぬとも分からない。挙げ句、好きでもない女と結婚して子を成せ?どこまでも私をこけにして…」
「お、館さ…ま…」