第6章 藤に詩へば$(無惨裏)
「前の薬師に私は二十歳まで生きられないと聞いた…」
「そんな…!」
そんなの……
短すぎる……
「今の薬師は私の体を少しでも、長らえるように体を作り替えると言っていた」
「希望があるのなら、それに託しましょう。私は貴方様のお側から離れませんから」
「白藤……」
ぎゅっと抱き締められると、小さくトクントクンとお兄様の心音が聞こえてくる。
「お兄様……」
兄、か…
無理もない。
白藤とは家族同然の関係だ。
私はあと二ヶ月で二十歳となる。
もう、時がないのだ。
恋人の様に逢瀬を交わしている相手もいない。
それで愛が成就するわけでも無いからだ。
常人にできることが私には出来ない。
彼女に、思いを告げたとして、側にいてやることが出来ぬのならば、最初から……
何も、告げぬ事が正解なのだ。