第44章 隠としての素質
今日は時透様のお屋敷と不死川様のお屋敷に行く日だ。
「これを着ていけ」
手渡されたのは丈の短い着物と袴。
「冨岡さん?」
「相手はあの不死川だ。油断するな」
「ふふ。冨岡さん、心配し過ぎです」
笑っていると、真面目に聞けと釘をさされる。
「お前は危機感が足りない…」
「むぅ。ちゃんと日が暮れてから行動してますよ」
「そういうことじゃない…」
「はいはい、じゃあ着替えて来ますね」
いつもの着物から冨岡が用意した着物に着替える。
矢羽柄の着物に藤色の袴を身に纏い、私は冨岡の屋敷から外に出た。
冨岡に散々送ると言われたが、行き帰りも稽古の内だからと断った。
最近冨岡がめっぽう過保護になった気がする。