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鬼滅の刃R18 藤の花嫁

第19章 馳(は)せる


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落ち着かない。

縁壱様、巌勝様…



私を抱き締めてくれる大きな手を今でも覚えている。


継国巌勝様、当時懇意にしていた始まりの呼吸の剣士、縁壱様の双子の兄君。



あの当時は本当にできることが少なくて。



そう言えば、巌勝様が居なくなる前にも羽織を仕立て直した事があった。


その後、彼は鬼になったと言われているが。



私は『鬼』となった彼を直接見て居ない。

だから、信じられない。

人の身のままの彼の姿しか……


今となっては遠い昔。
でも私だけは知っている。


痣者が死んでいった過去。


かの人はいつも一人だった。



「……巌勝…様」



こういう時、泣けば良いのだろう。
でも、私に泣く価値はない。



あの日、あの人の側に居られなかった私には。

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