第80章 家族の形$ 其の二
誰かと食事をする。
そんな、ほんの些細なことだけれども。
しのぶにとって、とても大きな一歩だった。
そしてそれは鋼鐵塚にとっても。
特に会話も無く、静かに歩いているだけなのに、いつもの帰路が今日は別の道に見えてしまうくらい。
目に映るものが、これまでよりも美しく見えた気がした。
蝶屋敷が見えてきた辺りで、しのぶが足を止めた。
「どうかしたのか?」
「いいえ」
なんでもない。
けれども不思議と心地よいこの時間が、このまま終わるのが口惜しくて……
もう少しだけ、二人で居たい。
その一言を伝えようにも、今のしのぶは上手く声を出せなくて……
このどうしようもない衝動が『恋』だということに、まだ二人とも気づいていない。
「もう少しだけ散歩するか?」
「はい」
鋼鐵塚の提案にほっと胸を撫で下ろす。
いつの間にか、ぎこちなかった手繋ぎが自然に出来るくらいには、距離が縮まったのである。