第77章 契りて繋がる縁たち$(冨岡裏)
「二人とも何かあったのか?」
「義勇さん、私は御館様に呼ばれていますので少し席を外します」
「そう、なのか?」
「ええ、終わり次第戻りますので」
白藤が居なくなってから、二人の間に沈黙が流れる。
「冨岡さん。今日は、おめでとうございます……」
「胡蝶、何か怒っているのか?」
「怒ってません。私は………」
「胡蝶?」
「冨岡さん、私は……………でした」
『貴方が好きでした』
「胡蝶。すまない。俺は、お前を異性として見ようとしなかった……」
「は?」
「俺は……何も知らない振りをして、柱になった後も、ずっと耳を塞いだままで……」
「冨岡さん?」
「逃げ回っていたのは、俺の方だ……済まなかった」
謝罪が欲しい訳じゃない。
「謝られても、嬉しくなんてありません……」
「そうだな。俺が白藤を愛しているのは変わらない。だが、胡蝶。今からでも間に合うなら、俺はお前の朋友(とも)だと胸を張って言えるような男に成りたいと思っている……」
しのぶは少しだけ胸の奥が痛むのを感じつつ、涙を堪えて笑みを見せる。
ここで泣く訳にはいかない。
「……何ですか、それ?……それを言うなら、私達は戦友、ですよね?」
「ありがとう……」
この恋が実ることは無かったけれど、言葉にしてようやく心が軽くなったのを胡蝶は自覚した。
「それでは、また」
「ああ、またな」