第75章 君と二人で永遠(とわ)に眠るる
「まだ、起きないつもりか?」
冨岡は未だ眠りつづける白藤に声をかける。
しかし最後の戦いから六十年以上経った今でも彼女は目覚めぬままだ。
痣者は寿命が縮むと聞いていたが、俺たちは充分長生きすることが出来た。
余生は誰かと添い遂げろと言われ、一度彼女の元を離れ、俺はくいな様と夫婦になった。
産屋敷の身内になるのは正直気が引けたが、くいな様が最終戦で俺に好意を抱いたことがきっかけらしい。
くいな様はどことなく白藤に似ている。
容姿、実は気の強い所、料理上手。
「俺で良かったのですか?」
「ええ。正直に言いますと、貴方の目がどことなく父様に似ていたからですね」
そうか、俺たちはお互い誰かを重ねて夫婦になったのか。
祝言の際は元鬼殺隊の隊士たちも全員参加し、俺たちを祝ってくれた。
「義勇さん」
「炭治郎」
「白藤さんは?」
「まだ、眠ったままだ」
「そうですか……俺、義勇さんはずっと白藤さんを待っているんだと思ってました」
「そうだな。正直そうしたかった気持ちもあるが……目覚めない自分を待ち続けないで欲しいと白藤に言われそうな気もしてな……」
確かに、彼女ならそう望むかもしれない。