第77章 乞い願う、光を求めて
「道摩法師……」
部下にジト目で睨まれ、居心地の悪そうに後頭部をガシガシと掻く道満。
無精髭まで生やした道満は、自ら田舎者と名乗るくらいに無作法者といった風体をしていた。
辛うじて烏帽子が引っかかっているようなざんばらな髪。
唐の国伝来の眼鏡に、無精髭。
狩衣とて、着古したような縹(はなだ)色の物を着用している。
ぼりぼりと頭を掻く指からは、ふけの塊がぼろぼろと零れてくる。
見るからに、そぐわない男であるにもかかわらず、その男の纏う空気だけが、他者とは違うのを肌で感じるのだ。
「して、産屋敷殿。これからお屋敷へ伺っても宜しいでしょうか?」
「道摩法師、先触れもなしにそんな……!!」
明らかに動揺する部下を見てもその飄々とした態度は変わらない。
「産屋敷殿とて、自ら足を運ばれたのだ。下位である私が自ら動かず何とする?」
言わんとしていることは真っ当なのだが、底の知れない笑みを浮かべるこの男を、信用していいのかと、疑問が首を模たげてしまう。