第74章 春待ちて、芽吹く想い
あの戦いから、1年が経った。
鬼殺隊は解散後、警備隊と名を変えて活動している。
鬼舞辻、いや、蘆屋道満との戦いで、多くの被害を出した地域を復興させるべく、警備隊は日夜活動している。
「………」
五体満足に動けるのは、柱達と炭治郎、善逸、伊之助、カナヲ、玄弥くらいである。
一般隊士はあの戦いで身体が欠損した者も居たが、死者は最低限で済んだと思われる。
それもみな彼女の働きが大きい。
白藤のお陰で、傷の治りも早かったし、あの戦いを生き抜けたのは彼女がいたからだと、素直に思っている。
だからこそ……
人喰い鬼となった彼女が無惨と同化し、最後に俺に頼んだ。
『殺して』と。
とどめを刺せなかったのは、俺の弱さで。
あの時、彼女を……
俺は……未練がましいな。
朝日で灰になる彼女の夢を何度も繰り返し見ている。
その度に手を伸ばして、引き戻そうと足掻いている。
たとえ、無駄だと分かっていても、手を伸ばさずには居られない。
『消えないでくれ。俺を置いていかないでくれ……』
夢の中で俺は、ずっとそう唱え続けている。