第77章 咲くは朱なれど散るは白
「お前たちは無惨を鬼神にするための『贄』だ。誰一人としてこの場から逃がしはしない……ふるべふるべ、ゆらゆらと……」
「させるか!!」
宇髄が蘆屋道満に向かって煙玉を投げつける。
動揺を誘って詠唱を途切らせることが狙いであるのだが、さすがは歴戦の術士というべきか、ひらりとかわされてしまう。
降るべの唄は降霊の呪言。
今は亡き者を黄泉より呼び寄せる。
この場にいる者たちを全員黄泉路に送り付ける算段かもしれない。
そうはさせない。
白藤とて、この場に大切な人がいるのだから。
「嘴平!!たたみかけるぞ!!」
「おう!!」
宇髄の号令で伊之助も臨戦態勢に入る。
予備動作無しで動き出せるのは、伊之助の専売特許である。
「音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々!!」
「獣の呼吸 伍ノ牙 狂い裂き!!」
遊郭での合同任務より月日は経過したが、伊之助が柱稽古で基礎体力を底上げしたために、宇髄との連携にもついていけている。