第73章 乞い願う、光を求めて
兄である巌勝を待ち続ける私に、彼は巌勝が鬼になったことをひた隠した。
今思えば、彼は全て背負ってくれたのだ。
そんな昔の事を追想していた折に、白藤は珠世に名を呼ばれた。
そして、その名に鬼舞辻が反応したのである。
目が離せなくなる程に彼女に惹かれるのは何故なのか、その原因を知るために、鬼舞辻自身も昔の記憶を紐解いた。
白藤に近づこうとする鬼舞辻を警戒して冨岡と不死川が、二人の間に割って入るが、鬼舞辻に名を呼ばれた彼女が涙ながらに無惨の名を呼ぶ。
白藤もまた、鬼舞辻の記憶を取り戻したのだ。
無惨の胸中に広がる当時の想い。
彼女を鬼に変えてしまった後悔と自責の念から、彼は藤の花に白藤を重ねて、いつしか避けるようになった。
あの時、平安の世から全ては始まったのだ。