第72章 乞い願う、光を求めて
「それ、は……」
何故か頭の中に霧がかかってしまい、思い出せない。
「君と炎柱が会った場所の近くで、心当たりは?」
「いえ、気絶していたので……」
尋問されている訳では無いのに、何となく嫌な汗が背をつたう。
「混乱しているのかも知れないね。焦らなくていい。だが当分は君は藤の花の屋敷に入って貰う」
「藤の花の屋敷?」
耳慣れない名称に白藤が首を傾げる。
「ああ。隊士達の怪我の治療などを目的とした旅籠の様な屋敷だよ」
「治療……でも、私に医療の知識は……」
「そう。でも、君にとっても悪い話じゃないはずだ。君は、藤の花の屋敷に隊士が治療に来たら、性を喰らっていい。不思議なことに、君を抱くと怪我が治るらしいしね」
「え……?」
怪我が治る?
「君は恐らく鬼だろう。けれど、人喰い鬼ではないようだから、とりあえずは様子見だね。けれど、私の家族である隊士達をその手で殺めるようであれば、君の身の保障もなくなるから、そのつもりでね?」
最後のは警告だろう。
それまでの優しい声音とは違う、冷淡な響きをしていた。
こうして、白藤は鬼殺隊の藤の花の屋敷で働くようになったのである。