第76章 違えし縁
好奇心よりも既視感を覚える言い回しに、内裏で会うことの出来る数少ない同族の様な存在に感じられたのだ。
「朝早くにすまない。蘆屋道満殿に会うにはどうすれば良いのだろうか?」
陰陽寮には直丁(じきちょう)と呼ばれる雑務処理の係が交代で宿直に当たっていたため、舞山はその内の一人に声をかけた。
「晴明様ではなく、道摩法師ですか?」
あからさまに顔色を曇らせる直丁を目前にして、舞山も眉根を寄せる心境だ。
蘆屋道満とは、そんなにも毛嫌いされるような人材なのだろうか?
直丁が後ろにいた同僚と何やら耳打ちでひそひそと話している。
「では、ご案内します」
舞山の前に歩み寄ってきたのは声をかけた直丁ではなく、先程密談をしていた者だ。
「こちらです」
道すがら彼に事情を聞いてみると、かの蘆屋道満は陰陽寮の中では道摩法師と呼ばれていて、方術比べで安倍晴明に敗北後、調べ物と称して、書簡庫で寝泊まりをしれいるらしい。