第76章 違えし縁
帝の勅命を受けて動くほどの凄腕だ。
本来ならば、安倍晴明に頼むのが一番なのだろう。
ただ、安倍晴明は表立った存在だ。
彼に言伝を頼もうものなら、幾人もの者たちが囃し立てるだろう。
かねてより、産屋敷は表舞台には立たない。
裏稼業を一手に担う我が一族が矢面に立つのは思わしくない。
だとすれば、安倍晴明の次に名の通る男。
蘆屋道満。
彼に頼むとしよう。
安倍晴明と並んで非常に秀でていると聞く。
ただ、彼の人となりは………
方術比べで安倍晴明に敗れてから、金を積めば大抵の事は引き受けてくれるという蘆屋道満。
彼を見たもの達は皆口を揃えてこう呼ぶ。
『没落貴族のような陰気な男』