第76章 違えし縁
私の体は、どうしてしまったのだ……?
『分からないことは、陰陽師に聞くのが一番ですよ』
ふ、と何気なく、同僚から聞いた言葉を思い出した舞山は、彼女の身を清めて、私室に寝かせてから屋敷を出た。
不思議と普段より体が軽い。
ここ最近臥せっていて、体力が衰えていた筈なのに。
まだ日が昇って間もない時間。
宿直(とのい)の者に聞いてみないと分からないが、舞山はいそいそと陰陽寮へと続く道を進んだ。
陰陽寮に知り合いなど、居ないにひとしい舞山であったが、腕利きの陰陽師と評される人物を二人知っていた。
一人は当代随一と称される、『安倍晴明』。
もう一人は播磨国から出てきた『蘆屋道満』。
陰陽寮では様々な仕事があるが、二人とも秀でているのは魑魅魍魎(ちみもうりょう)の大群である百鬼夜行を退けられる程の神通力を持っていると聞く。
安倍晴明は狐の子である、といつからか言われているが、そうでなければ説明が付かぬほど、常人をはるかに凌ぐ実力を持っている。
神の末席に連なる『十二神将』を従えているのが、その証拠だ。
十二神将たちは一条戻橋の橋のたもとで晴明の命令を待っているという。