第72章 乞い願う、光を求めて
道満はいつも敢えて包囲網に穴を開けていた。
逃げ道がそこしかない故に無惨の位置を付かず離れず見張るために。
京都守護を任されている安倍晴明がそう易々と都の外に出て来られないのを知っているからこそ、鬼に変貌した無惨を都から出したのである。
だが……と道満は考える。
あの男の事だ。
そろそろ何かに気づく頃合いだろう。
安倍晴明に気取られぬように、騒ぎを起こさなければならない。
その点では、逃げながら鬼を増やす無惨に内心拍手していた。
図らずとも徹底した逃亡をしている彼を道満は愉快そうに眺めていた。
白藤を汚し、鬼に追い落としてから、道満は彼女を廃屋となった山寺に捨てたのだ。
人里離れた地ならば、性を喰らっても直ぐには手出しをされないと高を括っていたのである。
折を見て様子を見に行けば良いと思っていたが、彼女が消息を断ち、姿を消した事に道満は動揺した。