第76章 違えし縁
ーー陽光は私の元から全てを奪うーー
かつて人であった頃は、陽の下に出られる機会が極端に少なかった。
自身の体は病弱であるが故に虚弱。
長い時間、陽光の下にいると頭痛がした。
起き上がるのも、涼しくなってくる夕方から夜にかけて。
その内、自然と陽光が嫌いになっていた。
「お兄様。お加減は如何ですか?」
私の視界に入るものに色は無かった。
全てが灰色に見えていた。
色を認識出来ていたのは、彼女だけだ。
下働きの下男も、側仕えもいないこの屋敷で、女房の彼女だけが私の心の支えであり、生きる希望だった。