第76章 違えし縁
一体、何なのだ。
この男に対する既視感は……
人を気にする事など、これまで久しくなかった。
「何を惚(ほう)けているのだ、鬼舞辻無惨。お前は私の作りし最強の鬼だ。人間如きにやられてどうする」
「……作られ、た………?」
何を、言っている……?
だが、確かに知っているのだ。
この男の声を、仕草を、凍てつく様な眼差しを。
「蘆屋道満。何故、貴様がここに居るのです!?」
「ほう?見知った顔だと思っていたが、お前はあの時の女房か……ますます、滑稽だな……」
「白藤?」
ここまで、動揺した彼女を見たことがない。
そんな緊迫感だった。
急に騒がしい足音が聞こえるまでは。
「退け退け退けーーー!!伊之助様のお通りだーーー!!」