第76章 違えし縁
ズザッ。
文字通り駆けてきた甘露寺と伊黒が目にしたのは、鳴女から変貌した男と、無惨、無惨に吸収されかけている珠世、そして無惨を挟み込むように攻撃を防ぐ柱たちといった具合である。
「煉獄さん!!こっちに琵琶の鬼が来ませんでしたか!?」
目の前にいる男が鳴女だと分かっていない甘露寺が戦闘態勢を保持しながら、煉獄へ問いかける。
「甘露寺、伊黒。気を付けろ。琵琶の鬼があの男に姿を変えた……何かあるはずだ……」
今までに無いほどに神妙な面持ちで話す煉獄に、甘露寺も伊黒も場に流れる緊迫感を理解する。
「貴様が、何故ここに居る……」
あからさまに不機嫌な顔色を見せる無惨に対して。
「己が利に繋がる物があれば、結末を見届けるのも、また理であろう?」
「白藤?」
小さく震え出した白藤を見て、冨岡が声をかける。
明らかに様子がおかしい。
「義勇さん……あの男は…」
「………?」
「………『闇』そのものです……」