第72章 乞い願う、光を求めて
そうか、私は……
化け物に見えるんだ……
雨が降り始めた。
屋敷に戻る足取りも重くなっていく。
傘など持っていないため、着物も濡れて重くなって行く。
ああ……
このまま消えてしまいたい……
白藤は屋敷の裏口から入って真っ直ぐ浴室に向けて歩き出した。
どうか、お兄様が帰宅する前でありますように……
その様子を影から見つめる者がいた。
白藤を襲った修験者である。
あの娘は、じきに闇に堕ちる。
身体は申し分なかった。
あの娘が鬼に落ちきれなかった時は、自分の玩具にしようと考えを巡らせながら、笠を外し、何食わぬ顔で彼は舞山の屋敷に現れた。
「先日の女房様の体調は如何ですか?」
「ようやく回復して、買い出しに行くと出て行ってから暫く経つのですが……」
「そうですか」
糸目をより細くして道満は笑った。