第75章 折れない心
あと一歩のはずだ。
何が足りない?
鬼が苦手なもの……
「炎の呼吸 陸ノ型 天道直下!!(テンドウチョッカ)」
真上から刀を振り下ろし、煉獄は道満の髷(まげ)を斬りつける。
烏帽子も髷と同様、斬りつけられ、道満の髪は支えを失い、漆黒の髪が広がる。
「タ、スケテ……」
「!?」
広がった髪の隙間から見えたのは拳(こぶし)大の小さな白い人面。
こぽこぽといくつも顕(あらわれ)れ出した白い顔はそれぞれに口を開き始める。
助けを乞(こ)う声。
懺悔(ざんげ)する声。
呻(うめ)く声。
啜(すす)り泣く声。
怒り叫(さけ)ぶ声。
この顔達は道満に殺された無残な怨嗟の形なのか。
「炎の呼吸 漆ノ型 焔の燐片!!(ホムラノリンペン)」
乱れ打ちの合間に煉獄と道満の間を小さな黒い身体が駆け抜けた。