第71章 向かう白、揺蕩う藤色
足が、思う様に前に出ない。
情けねぇ。
身体が震えてやがる。
玄弥は奥歯を噛み締めた。
落ち着け。
ここにいるのは俺だけじゃない。
悲鳴嶼さんや兄貴。
他の柱たちもいる。
大丈夫だ……
玄弥は改めて鬼舞辻を見据えた。
「ははっ!久方ぶりの食事にありつけたことを感謝するぞ、鬼殺隊。飢(かつ)えていた今の私にはなかなか上等だった」
「柱は近くに居るか!?」
「上弦の壱との決戦後の岩柱、風柱、霞柱、水柱が付近にいると思われます!」
「よし!その四名に無惨を任せる!」
「了解です!!」
『伝令、伝令ー!岩柱、風柱、霞柱、水柱!今すぐ鬼舞辻無惨の元へ!!』
鎹鴉からの指示は御館様の意思。
「人の命を……何だと思っているのだ、お前は!!」
「珠世。お前とて喜んで夫と息子を喰らい尽くしたではないか!」