第71章 向かう白、揺蕩う藤色
「ぐあぁっ!!」
珠世の薬によって苦しみ始めた無惨が回復に専念するため、肉塊へと姿を変えた。
「倒した、のか……?」
様子を見ていた隊士達が鬼舞辻の元へと近づく。
「ダメだ、離れなさい!」
輝利哉の指示が鴉から伝えられるも、隊士の一人が刀を取り出し、無惨の肉塊に刀を押し付けた。
ぎゅるん!
何が起こったのか理解する間もなかった。
それくらい、あっという間だった。
集まっていた隊士達が突如として伸びてきた鞭のような物に捕まり、受け身も取れぬまま投げ飛ばされ、抵抗出来ぬまま鬼舞辻の肉塊へと吸い込まれた。
まさか……
ドクン。
肉塊が鼓動を打つかの様に動き出した。
最低の事態を考えながらも、柱達はその動向を見守っていた。
いや、動けなかった。
階級はどうであれ、目の前で無惨に惨たらしく痛めつけられ、吸収された数人の隊士達を目の当たりにして。
無惨が憎い。
けれども、同時に『恐怖』してしまう。