第71章 向かう白、揺蕩う藤色
「御館様!複数の隊士が鬼舞辻無惨を目撃して集まって来ています。指示を!」
「父上……」
ぱぁん!
「しっかりなさいませ!!泣いている暇はありませんよ!!父上亡き今、新しい御館様は貴方です!!隊士達を正しく導き、指示を伝えるのがお役目です!隊士達を無駄死にをさせない為にも、腹を括りなさい!!」
急な平手打ちをくらい、ジンジンと痛む右頬を押さえながら、輝利哉が目を丸くする。
初めて打(ぶ)たれたことの衝撃よりも、大人しかった姉がこれほどに喝を入れてきた事に驚いて声が出せずに居ると、横から顔を出したもう一人の姉が優しく輝利哉の手を握ってくれた。
「大丈夫です。鴉達も柱の皆様も健在です。ここには私達もいます。皆でこの戦いを乗り切りましょう。鬼舞辻を倒せば全て終わります」
そうだ。
鬼舞辻無惨を倒せば、全て終わる。
「鬼舞辻だ!!」
「馬鹿!俺たちだけじゃ太刀打ちできない!!皆が来るのを待とう!!」
「それじゃ遅いだろ!!」
平隊士が数名集まって言い争いを始めた。
見たところ階級は下の方だろう。
無鉄砲に突っ込んでいこうとするのが、その証拠である。
だが、あまり騒ぎ過ぎれば、あの隊士達が鬼舞辻に殺される恐れもある。
このまま前に出るべきか……