第70章 咲くは朱なれど散るは白
声が聞こえる。
『力が欲しいなら、鬼となれ』
ああ、そうだ。
今の俺が弱いから、こんな夢を見るんだ。
『夢の中でなら、鬼となっても誰も責めない』
そうだ。
ここは夢の中だから。
『夢の世界でなら、好いた者を護ることが出来る』
そうだ。
鬼になって、強くなれば、白藤さんを護ることが出来る。
『鬼となれば、その者の隣に並んで立てる』
そうだ。
ずっと傍にいられる。
『鬼となれ。欲するものが有るならば』
鬼になれば。
欲しい者に手が届く。
欲しい、欲しい。
彼女が、欲しい。
炭治郎が手を伸ばす。
初めて自らが恋焦がれた彼女。
傍に居たい。
繋ぎ止めたい。
笑顔にしたい。
俺が与えられるものは全て捧げても構わない。
だから、この手を……