第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
早くあの薬師を見つけなければ。
白藤を取り返すんだ。
彼女は私の所有物だ。
私の、断り無しに白藤に手出しするなど、許さない。
舞山の拳はわなわなと震えていた。
「何処だ!」
憤る舞山の前に薬師が現れた。
「これは産屋敷様」
薬師………
「白藤を返せ!!」
「どうなされたのですか?」
憤る舞山を前に薬師もたじろいだ。
「お前が白藤を拐かしたのだろう!!」
舞山はまるで人が変わったように薬師を糾弾する。
そうだ。
いっそ、全てを壊してしまえ。
舞山の中で何者かの声がした。
その声は不思議な響きを帯びていて、まるで歌うように舞山の衝動を駆り立てるのだ。
『全て、壊してやる』