第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
舞山が何の気なしに懐に手をやるとカサりと音がした。
先程、蘆屋道満から手渡された薬包だ。
気を落ち着かせる効果があると言っていたな。
舞山は躊躇いなくその薬を口にした。
何だ?
変化はすぐに現れた。
渇く。
酷く、喉が渇く。
水を探そうかとも思うが、舞山の足は薬師の屋敷に向かい歩き続ける。
水。
薬師の屋敷の手前に小川が流れていたが、不思議と飲みたいとは思わなかった。
こんなにも、喉が渇いているのに。
おかしいと思いながらも、舞山は歩き続ける。
門扉の近くには誰もいない。
ならば屋敷の中か?
舞山の足は止まらない。