第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
被衣を被っていて、顔が良く見えぬ……
式を通して、術を放つ。
軽い風を起こして被衣を飛ばすと、現れたのは齢十五の少女。
舞山が話していた黒いたおやかな髪は欠片もなく。
全てが白に染まっていた。
だが、線は細くも若く美しい娘。
どことなく色気を感じさせる仕草。
道満は白藤を一目で気に入った。
依頼人は若い貴族。
病がちだが、出自は名家。
対する女房はその家に仕える側妻の孫娘。
ーー貴族の出世に女は付き物。
あの女房は俺が貰おうーー
道満の企みに舞山は気付かない。
舞山の中では、それよりも遥かに憤りが、妬みが強く根ずいてきていたからだ。