第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
そんな折だ。
薬師が躍起になって駆けつけて来て白藤に薬包を手渡してこう言った。
「これは、万能薬になるやもしれません!」
その時の何かに取り憑かれたような薬師の異様さに白藤は一瞬恐怖を覚えた。
万能薬……?
毒のある、彼岸花から?
本当なのだろうか?
彼岸花の薬を服用するようになってから白藤はその毒性からか、頻繁に腹痛を起こし、酷い時には胃の中の物を全て吐いていた。
お兄様のお世話をするつもりが私の方が伏せってしまい、心苦しい日々が過ぎていった。
本当に?
私の薬師に対しての信用は段々と薄れてきていた。
「コレは今までとは違います。ようやく完成した幻の花『青い彼岸花』から抽出したこの秘薬ならば………」
青い、彼岸花?
耳慣れないというよりも、存在さえ疑わしい花の名を聞いて。
白藤の瞳は疑念の色を浮かべる。