第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
「下らぬ……」
炎虎は無惨の鞭のように伸びる腕によって、消し飛んだが。
「珠世さん!」
炭治郎が珠世の手を掴み、事なきを得た。
だが、珠世の肉体は崩壊を続けている。
どうすれば、良いんだ?
炭治郎は頭を抱えた。
ここは蝶屋敷じゃないから医学を処方できない。
ましてや、この場には肝心の胡蝶さんが居ない。
どうする?
こんな時、いつもなら………
ハッとして、炭治郎は反射的に振り返った。
そうだ、彼女なら。
炭治郎は冨岡の横に居る白藤に向かって手を振ろうとした。
「それ以上、動くな!竈門少年!!」
グイッ!!
煉獄に隊服の襟首を掴まれた炭治郎が後方へ下げられた。
次の瞬間。
「へ?」
ズシャッ!!
「煉、獄さん……?」
そこには、煉獄の左腕が落ちていて。
一瞬、炭治郎は体の芯が冷えていくような感覚に囚われる。
「気にするな、竈門少年!!」
振り返った煉獄が額に汗を浮かべながら、笑顔を作っていた。