第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
ガラガラガラ。
城全体が揺れてる。
師範が『カナヲならやれる』と言ってくれたけれど。
私が出来る技なんてたかが知れてる。
カナエ姉さんの方が技の精度が上だった。
でも、託されたからには進むしかない。
カナヲは必死に走った。
無限城の回廊は今、逆上れば産屋敷邸に繋がる。
これは推測だけどと胡蝶に念を押されたが。
鬼が減って想定外のことが起きている無惨にとってはカナヲ一人の動きなど見向きもしないだろう。
禰󠄀豆子を連れてくる。
それがカナヲに託された使命だ。
本来ならば隠さなければならない禰󠄀豆子を何故と思うが師範が、しのぶ姉さんが言うなら、この場に彼女が必要なんだと。
それによって、きっと何かが変わるのだと。
お願い、間に合って。
カナヲは速度を上げる。
継ぎ接ぎのような回廊を必死に駆ける。
走れ、走れ、走れ。
疲弊した体を叱咤しながら、カナヲは走り続けた。