第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
「ダメですね、俺は……」
「竈門少年?」
「無惨を倒すために強くなってきたはずなのに、あんな光景を見ると……家族の最期と重なって見えてしまって……」
駄目だ、心を奮い立たせろ。
ここで泣いても何も変わらない。
「竈門少年。今は堪えろ。君は強くなった。それは俺も知っている。だから、今日で終わらせるぞ。哀しみの連鎖を。俺たちで止めるんだ」
「…………」
そうだ、今日で、決着をつけるんだ。
俺一人じゃ無理でも、煉獄さんが居るなら……
ーー心を、燃やせーー
あの日、言われた言葉を。
俺は何度も繰り返し、胸の内で唱えてきた。
隣にいる煉獄さんに。
いつだって俺は助けられてばかりだ。
「大丈夫か?竈門少年」
唇を引き絞り、顔を横に振って涙を蹴散らす。
「大丈夫です」
「では、行くぞ」