第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
「人間とは違い、烏の肉など喰えた物では無いな」
握り潰した鎹烏を床に放り投げて、無惨は珠代の髪を無理やりに掴む。
「どうだ?珠代。お前の『鬼を人間に戻す薬』とやらも結局効きはしなかったようだぞ?」
「お前は……今日…必ず…地獄に……堕ち……る…」
「今まで何百もの人間が私にその言葉を吐き散らしたが、それが叶うことは決して無かった。気の毒なことだ。お前もそう思うだろう?珠代」
ギチギチ。
珠代の顔にも無惨の腕の口が近づいていく。
居た!!見つけた!!
無惨だ!!
「竈門少年、落ち着け」
「煉獄さん……」
「まだ無惨は俺たちに気づいていない。ギリギリまで近づくぞ」
「………はい」
ビタっ!
「集中!」
「……」
「どうした?」
「前にもありましたよね」
「うむ。君が無限列車で刺された時だな」
「はい……」
不思議だ。
まだ1年と経っていないはずなのに、随分前の事のように感じる。