第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
ガッ。
無惨が腕を触手のように伸ばし、鎹烏を捕まえる。
「全員死んだぞ?」
腕どころか無惨の体一面に貼り付いている口が動き、鎹烏の胴体に歯を突き立てる。
「ギャッ!!」
「千年以上生きていると喰い物が旨いという感覚も無くなってくるが、餓えていた今の食事は実に美味だった……」
ボタボタ。
烏から血が滴(したた)る。
「私の為にわざわざ食糧を運んできたこと、褒めてやろう産屋敷」
輝利哉に届くようにと無惨は声をかける。
「聞こえているか?跡継ぎになった息子か娘……どちらが指揮をとっているかは知らぬが、実に優秀だな。私の前で跪き頭を垂れるならば鬼にしてやってもいいぞ。丁度私は殆どの部下を失った所だからな……」
「第二陣も退がらせろ!!無惨に近づくな!!隊員が喰われれば体力を回復させてしまう!!」
「ふん、愚かだな。産屋敷」
ぐしゃ。
鎹烏を始末する。