第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
数人の隊士が、肉塊から伸びる蜘蛛の糸のような肉に向かい、刀を振るう。
「それよりまず、四方八方に足がけしている肉を斬ろう!!」
「そうだ!俺はこっちを!!」
ガキン!!
だが、大多数が呼吸を上手く使いこなせていない隊士のため、無惨の硬度の高い肉を断ち斬るには実力が圧倒的に足りていない。
ガツッ!!
それでも懸命に刀を振るう隊士に鎹烏は告げる。
「待て!!ちょっと待て!!待機命令が出てる!!」
「待機なんてしてる場合じゃないだろ!!」
士気を下げぬようにとしているのか、一人の隊士が反論する。
「柱が来るまでに少しでも何か役にーーー………」
グワッ。
だが、その隊士は突如背後に現れた暗闇に飲み込まれた。
「え……」
ガシャ。
隊士が持っていた刀が落ちる。
いや、詳しく言えば、刀を握っていた腕だけが通路に落下したのだ。
なら、彼の体は………?
「無惨が!!」
一人の隊士が声を上げる。
ドロ……
通路の中央の肉塊の皮が解け落ちる。
ジュワ。
まるで毒でもあるかのように、肉片が落ちた通路の床は音を立て変色する。
「出て来っ……」
空になった肉塊。
中に居たはずの無惨は次は何を狙って………
ガガガガガガガ!!
騒音とともに意識を失う隊士たち。