第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
しかし、その力を有していないかたとくいなは戸惑いの声を上げる。
「えっ?」
「無惨の所に行かせるな!!柱が来るまで待機命令だ!!」
輝利哉は叫ぶ。
鎹烏を通して全部隊へと声を届ける。
これ以上、犠牲を出す訳にはいかない。
柱は白藤が何とか回復してくれている。
だが、一般隊士は?
先程しのぶが救護に専念すると名乗りを上げてくれたが、こちらは鬼のような目覚ましい回復は見込めない。
ならばやはり、強者が来るまでは待機させるべきだ。
「これだ!!見つけた!!」
一人の隊士が声を上げる。
「無惨だ!!」
空間と空間の隙間に肉の繭のような球体が張り付いていた。
「刃が届かない!!」
隊士たちが徐々に集まり始めた。
「落ち着け!!」
「誰か飛べるか?彼処(あそこ)まで!!」
無惨に攻撃を当てられないものかと、隊士たちは頭をひねる。