第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
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「ダメだ、間に合わない。珠代さん……」
「輝利哉……いえ、御館様、どうなさいましたか?」
「無惨が、復活するかもしれない……」
「何故!?隊士たちの第一陣はまもなく到着します!!」
「第二陣も追ってすぐに!!」
かなたとくいなが無限城の図面を見ながら報告する。
ちなみにこの図面は愈史郎の目くらましの術をかけた鎹烏たちの情報をもとにして作ったものだ。
気配を察知されずにいかに正確な位置を示せるかに赴きをおいた図面。
無限城とて建物に変わりは無い。
入り組んでいるとはいえ、空白の空間などがあるはずだ。
まだ全容を理解できない。
ただ、琵琶の音に合わせ、城の通路が伸び縮みしている。
伸びるのは最大七軒先。
縮むのは三件先ほどだと、報告が来た。
報告してきたのが譜面に詳しい宇髄だからこそ、輝利哉も直ぐに信用した。
「待て!!行くな、止まれ!!」
輝利哉の脳裏の片隅に最悪の場面が映し出された。
産屋敷家当主は代々先見の力を有している。
その能力故か。
輝利哉もまた、数瞬先の未来を予見した。