第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
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「頑張れ、禰󠄀豆子。」
鱗滝が見守る中、禰󠄀豆子は産屋敷本邸の離れで眠りに就いていた。
珠代と胡蝶が共同で開発した鬼を人に戻す薬を投与してから、そろそろ半刻。
玉のような汗をうかべ、苦悶の表情を浮かべる禰󠄀豆子。
その額を手拭いで拭いてやる。
今、禰󠄀豆子の体の中で何が起こっているのか。
ここにいる誰もそれは分からない。
鱗滝は禰󠄀豆子の兄である炭治郎と冨岡義勇の育手である。
炭治郎に厳しい修行を課す中、眠り続ける禰󠄀豆子に『人間を守れ』と暗示をかけたのは、鱗滝だ。
禰󠄀豆子はそれをずっと守ってきた。
人を喰わず、炭治郎と共に戦い、生き抜いてきた。
太陽の光さえ克服した禰󠄀豆子を無惨は狙っているだろう。
この戦いの本質はいかに防衛するかである。
禰󠄀豆子も御館様も無惨に脅かされぬようにしなくては。