第72章 邂逅、別離
白藤が目尻に涙を溜めて俺の顔を覗き込んでいる。
「良かった。目が覚めたのですね……」
ポタリと冨岡の頬に一雫が落ちる。
「………泣くな」
冨岡が右手を動かして、白藤の目尻の涙を拭う。
「はい」
「イチャこらしてんなよォ、冨岡ァ」
声のする方へ視線を向ければ、腹部に真新しい包帯を巻いた不死川が視界に入った。
「不死川………」
「不死川様、まだ動かない方が……」
「こんな傷慣れてらァ……悲鳴嶼さんも動いてんだァ、休んでらんねェよ……それより、白藤も無茶すんなァ……」
出血の止まらなかった腹部の傷。
どういう訳か右手の藤の花の紋様が光り、傷が消えたのだ。
恐らく白藤の血鬼術なのだろうが。
「倒れんなよォ?白藤」
「はい」
「向こうに出口があるみたいだね」
「時透。もういいのか?」
「はい。白藤さんのおかげです」