第72章 邂逅、別離
何故奴らは向かってくるのだ。
何故……
ピシッ。
解せぬ。
肉体がひび割れていく。
ボロボロと崩れ去るように。
肉体を、再、生……
できぬ。
目に見えぬ何かに阻止されているようだ。
何が足りぬというのだ。
俺は……
まだ、倒れる訳には………
赫刀が迫ってくる。
もはや、これまで、か……
黒死牟は最後の最後、化け物と化していた姿から人のそれへと変化した。
それだけ力が削がれたという事なのだろう。
黒髪の剣士。
数百年振りに相見えた巌勝の顔に恐怖の色は見えず、代わりに穏やかな表情を浮かべていた。
「巌勝、様……」
その変化に気付き、冨岡が型を変える。
もう、この男に戦う意思は無いのだろう。
「水の呼吸 伍ノ型 干天の慈雨」
冨岡の技と時透の体が再生し終わるのが同時だった。
白藤は駆けた。
巌勝の体が塵となる前に。
せめて最後の彼を……