第72章 邂逅、別離
ざわざわと胸の内が冷えていくような感じがした。
目の前にいる玄弥の存在に違和感を感じる。
何があったの?
そうして感覚を研ぎ澄ましてはたと気付く。
玄弥の中に黒死牟の気配を感じる。
「玄弥君……」
どうやったのかは分からない。
でもこのままでは以前の私のように、身の内を食い荒らされるかもしれない。
人の体にとって鬼は有害だ。
私が例外なだけ……
そう、御館様から聞いている。
「玄弥君、そのままでは危険です」
白藤が玄弥の腕を掴む。
「白藤さん、止めないで下さい」
「止めます!でなければ、貴方まで鬼に……」
振り解けない強さで掴まれているわけでは無い。
ただ、彼女の目が訴えている。
強い、意志の光だ。
だが、俺も引くわけにはいかない。