第72章 邂逅、別離
そうすれば、縁壱がもう一度自分に向かって来るのでは無いかと。
「そんなに老いた体で俺に向かってくるのか?」
縁壱の体は動く気配がない。
当たり前だ。
この男は、死んでいる。
人の本望を遂げた死に方である。
「縁壱……」
今の俺の本能は人を捕食すること。
なれば尚更、お前を喰らえば今以上に強くなれるのを知っているのに。
だが、やはり食えなんだ。
血肉を分けたからなのか?
情が込み上げたのか。
今となっても理由は分からない。
ただ……
また置いて行かれたと思っていたのかもしれない。
『巌勝様』
何だ?今のは……
脳裏に微かによぎった女子(おなご)の声。