第71章 残荷、陽炎
好きな人や大切な人は漠然と、明日も明後日も生きてる気がする。
それはただの願望でしかなくて、絶対だよと約束されたものではないのに。
人はどうしてかそう、思い込んでしまうんだ。
「相変わらず貧相な風体をしてやがるなぁ。よぉ、久し振りだなぁ善逸」
「獪岳。鬼になったお前を、俺はもう兄弟子とは思わない」
善逸の気迫に押され、伊之助は押し黙る。
「変わってねぇなぁ。チビでみすぼらしい。軟弱なまんまでよ。なぁ善逸、柱にはなれたのかよ?壱ノ型以外も使えるようになったか?」
「あぁ?何だテメェ……」
「適当な穴埋めで上弦の下っ端に入れたのが、随分嬉しいようだな」
「何だと?ハハッ!!言うようになったじゃねぇかお前……」
「何でだよ、雷の呼吸の継承権持った奴が何で鬼になった?アンタが鬼になったせいで、爺ちゃんは腹切って死んだ!!」
「知るかよ」
「爺ちゃんは一人で腹を切ったんだ。介錯もつけずに。腹を切った時誰かに首を落として貰えなきゃ、長い時間苦しんで死ぬことになる。
爺ちゃんは自分で喉も心臓も突かずに死んだ!
雷の呼吸の使い手から鬼を出したからだぞ!!」