第71章 残荷、陽炎
「マジかよ、鬼居すぎだろ!」
鬼の頸を狩りつつも、力量不足の鬼からは逃げるということを繰り返しながら彼(村田)は無限城を走り回っていた。
「逃げるな、愚か者め」
ビタン!
「ぃっ、痛いなぁ!誰だ?お前」
危うくひっくり返りそうになるのを堪え、村田は疑問を口にする。
「愈史郎だ。今お前の額に付けた札には目隠しの術が施してある。つまり、存在を消して相手に近付くことが可能になる」
「へぇー。便利だな。でも、お前は付けなくて良いのか?」
村田の言葉に愈史郎は否と答える。
「俺はコレを配らなきゃならないからまだいいんだよ。先に鴉に貼ってやりたいんだが、号令はかけられるか?」
「ん?あぁ、できるよ。待ってて。打扇(うつぎ)この札を鴉に配ってくれ。出来るだけ速く。柱の鴉にも届けて」
「柱ノ!?何デ俺ナンダ!?」
「俺が聞きたいよー。でも今は緊急時だからな。誰かが少しでも前に出なきゃいけないんだ。頼む!」
「分カッタ!!」
(※村田さんの鴉に名前を付けました。鴉に目隠し札を配った功労者設定です)