第70章 氷中の激情
童磨が灰になり、ようやく一同の緊張の糸が切れる。
「勝った……上弦の弐に……」
宇髄の呟きで皆、我に返る。
「カナヲ、ありがとう……」
「師範、伊之助……やったよ……」
「偉かったな。胡蝶の継子」
ポンと頭を撫でてやる。
「宇髄さん……」
四人が喜びを噛み締めていると地震のような揺れが生じた。
「この城、崩れかけてんのかぁ?」
「かもな」
「胡蝶お前は継子と一緒に居ろ」
「宇髄さん」
「分かったな?」
不服そうな胡蝶を尻目に、俺はカナヲに声をかけた。
「頼むぜ」
「はい。任されました」
「嘴平。一緒に来い」
「俺に命令……」
ヒュ……
「な……」
スパン!
「嘴平ーー!!」
足元の扉が開き、伊之助が吸い込まれた。
ー了ー