第70章 氷中の激情
「獣の呼吸 伍ノ牙 狂い裂き!!」
しのぶを守るように立ち、氷の蓮華を蹴散らしていく。
しのぶは伊之助のその背中を見てある日の三人の姿を思い出す。
煉獄と一緒に無限列車の任務をした後不甲斐ないと泣いていた伊之助、善逸、炭治郎の三人を。
前よりもずっと逞しくなった。
まるで、誰かさんみたいに。
その誰かさんは、藤姫を守っている。
隣りに居られないのは残念だけど、私も柱としての役割を果たす……
やらなければいけない。
たとえ、この鬼に毒が効かなくても。
ガチガチ!
「胡蝶、動くな!」
宇髄の制止も聞かず、童磨に向かっていく。
「ったく、無茶すんなよ!」
宇髄が童磨の眼前で技を放つ。
「音の呼吸 壱ノ型 轟!!」
ドドん!!
「目眩しなら無駄だよ?血鬼術・枯園垂り」
「させない!花の呼吸 弐ノ型 御影梅!!」
無数に伸びてくる氷柱を薙ぎ倒しながら、カナヲが童磨に近づくための道を切り開く。