第68章 リクエスト 現パロ 二人の家元$
蔦子に分かりましたと返事をし、龍臣を見送ってから、義勇は離れに向かう。
「元柳斎様、おいでですか?」
襖越しに声をかければ、中から返事が返ってきた。
「義勇か。入りなさい」
「失礼します」
部屋に入り、元柳斎に頭を下げる。
「顔を上げなさい」
「はい」
「義勇、今日は随分遅かったな」
「すみません、幼なじみと外を歩いていました」
「茶道宗家の不死川殿か?」
「いえ、如月堂の二女白藤さんとです」
この老人に嘘は通じない。
「………如月堂のか。蔦子は如月堂に嫁ぐが、お前は如月堂の娘を嫁に迎える気か?」
「何か不都合が?」
「お前に縁談が来ている」
「何件ですか?」
「三件だ」
「では、お断りを……」
「如月堂に何があるのだ」
「何も。ただの幼なじみです」