第67章 澱(おり)の中で$
鬼殺隊に身を預けるようになってから張り詰めていた生活ばかりだったのに、こんなにも穏やかな時間を過ごせたのは、初めてだった。
白藤は束の間の幸せを噛み締めた。
二人で離れに戻り、手を繋いだまま布団に入り込む。
お腹の中では鬼の子が時折、胎動している。
寄り添って眠ると冨岡にも微かにトントンと脈動の様な物が聞き取れる。
それと同時に、この子が自分の子宝であったらと、冨岡は少しばかり空想した。
女の子であれば、可愛がり、色々な服を着せてやりたいと思うし、男の子であれば、剣術や簡単な算術などを指導してやりたいと思っていた。
何より白藤との子であれば、男であれ、女であれ、愛する覚悟は出来ている。
だからこそ、あの鬼の子だと知らされた時は衝撃だった。
憎らしいと思う反面、羨ましいとも思った。
どれだけ愛していようと、俺相手では、子が出来ないからだ。
冨岡は穏やかな寝顔をしている白藤を見つめながら、彼女の頬に手を伸ばす。
どうか、このまま……