第67章 澱(おり)の中で$
「して、藤姫よ。腹の子は俺が斬る事に変わりが無いのなら、このまま逗留(とうりゅう)するも良しと思っていたが迎えは断わるか?」
「正直、義勇さんとは離れたくありません」
「そうか」
「ですが………義勇さんに重責を背負わせたく無いんです……」
「白藤?」
「私の我儘であることは分かっているんです……」
「藤姫。分かっている」
クシャりと槇寿郎の右手が白藤の頭を撫でる。
「槇寿郎様……」
「お前の頼みだからな。腹の子の事は俺に任せろ。ただ、今日一晩だけ離れで冨岡殿と泊まるように。俺からは以上だ」
槇寿郎が杏寿郎を連れ、自室へと下がって行く。
「「…………」」
冨岡と白藤は一瞬固まり、互いに目を白黒させた。
「……行くか?」
先に腰を浮かせたのは冨岡だった。