第67章 澱(おり)の中で$
巌勝様とは少し違う。
あの方は、役割の中で私の事を蔑ろにしない様に務めてくれた。
『限られた世界』の中の私の腕を引いてくれた人。
槇寿郎様にとって瑠火様が『忘れられない人』であるのと同じく、白藤にとっても、巌勝が同様の存在だった。
そう、ずっと。
変わらない、はずだった。
『不変』であるはずだった。
これまでは。
でも………
「義勇さんを、好きでいて、良いですか?」
「今更何だ?当たり前だろう?俺は好きでは足りない。『愛している』」
「義勇さん……///」
冨岡と藤姫殿の再会は喜ばしい事なのに、何だろうか、入りずらい空気というか………
杏寿郎がそわそわし始めたのを見兼ねたのか、槇寿郎が咳払いを一つした。
その事で、二人も現実に引き戻されたようで、照れくさそうな表情を浮かべていた。